「去年は何とか乗り切ったから、今年は大丈夫だろう」
1回目の確定申告を終えた方の多くが、そんなふうに感じて2回目を迎えます。
ところが、実際に始めてみると、去年にはなかった書類や請求に戸惑う場面があります。
住民税や国民健康保険料の通知が届いて、金額の大きさに驚いた。
帳簿を開いたら、前の年の数字がどこから始まるのか分からなくなった。
2回目の申告には、1回目とは違う種類の落とし穴があります。
この記事で扱う『2回目の確定申告』とは、1回目の確定申告を終えた翌年に行う申告を指します。
開業届を出した年が1年目、その翌年の春に行うのが、1年目の所得に対する1回目の申告です。
そこからさらに1年が過ぎて、2年目の所得を申告するのが2回目にあたります。
この記事では、2回目の申告で去年と変わるポイントを整理したうえで、事前に確認しておきたい書類と、資金の見通しの立て方をまとめました。
2回目の申告で、去年と変わる5つのポイント
1回目と2回目では、同じ申告でも、取り巻く状況が大きく変わります。
変わる点をあらかじめ知っておくと、戸惑いが減ります。
| 項目 | 1回目の申告 | 2回目の申告 |
|---|---|---|
| 対象の期間 | 開業した日から12月31日まで | 1月1日から12月31日までの1年間 |
| 税金・保険料の請求 | 所得税の申告と納付が中心 | 前年の所得をもとにした住民税や国民健康保険料の請求が加わる |
| 帳簿の始まり | 開業時点から記帳を始める | 前年の期末の残高を、期首の残高として引き継ぐ |
| 納税の方法 | 申告時にまとめて納付 | 前年の納税額によっては、予定納税が必要になる |
| 作業への慣れ | 手順を調べながら進める | 慣れによる見落としや、前年の流用ミスが起きやすい |
とくに注意したいのは、1つ目と2つ目の項目です。
1回目の申告を終えた時点では、まだ見えていなかった請求が、時間差で届き始めます。
1年目の所得が、2年目の請求になって届く

個人事業主の税金や保険料は、前の年の所得をもとに計算される仕組みのものが多くあります。
そのため、1年目に所得が出ていれば、2年目に入ってから請求が届き始めます。
住民税
住民税は、前年の所得に対して原則10%の税率がかかります。
確定申告の内容をもとに市区町村が計算し、例年6月ごろに納付書が届きます。
納付は6月、8月、10月、翌年1月の4回に分かれているのが一般的です。
会社員のころは給与から自動的に引かれていたため、まとまった請求額を目にして驚く方もいます。
なお、確定申告をしていれば、住民税の申告を別に行う必要はありません。
国民健康保険料
国民健康保険料も、前年の所得をもとに自治体ごとに算定されます。
加入している自治体によって計算方法が異なり、所得が増えると保険料も上がる傾向があります。
通知が届く時期は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の案内で確認します。
個人事業税
個人事業税は、一定の業種を営んでいて、事業の所得が年間290万円を超えた場合にかかる税金です。
税率は業種によって異なり、おおむね3%から5%です。
すべての業種が対象ではないため、自分の業種が対象かどうかは、都道府県の税事務所の案内で確認できます。
ここで押さえておきたいのは、1年目の申告で納めた所得税とは別に、これらの請求が重なって届くという点です。
1年目の所得が大きかった方ほど、2年目の負担を実感しやすくなります。
予定納税という仕組みを知っておく
『予定納税』とは、前年の所得税額が一定以上の場合に、その年の税金の一部を、年の途中で前払いする制度です。
前年の申告納税額が15万円以上になった場合、対象になります。
対象になると、7月と11月に、前年の納税額の3分の1ずつを納めます。
その年の確定申告で、納めた分を差し引いて、残りの税額を精算します。
所得が減って、前払いした額が実際の税額を上回った場合は、申告後に還付されます。
たとえば、1年目の申告で納めた所得税が30万円だった場合、2年目の7月と11月に、それぞれ10万円を前払いします。
2年目の確定申告では、前払いした合計20万円を差し引いて、残りの税額を精算します。
前払いした分は、あとから納める税額の一部に充てられるため、納税のタイミングが前倒しになる仕組みです。
予定納税の対象になる場合、税務署から6月ごろに『予定納税額の通知書』が届きます。
金額が大きい場合は、事前に知っておくだけでも、資金の準備がしやすくなります。
事業の状況が前年から大きく変わり、所得が見込みより下がる場合には、減額を申請できる制度もあります。
2年目に見落としやすい経費と控除
1年目は、開業の準備にかかった費用が多く、支出の中身が単発のものに偏りがちです。
2年目は、年払いのサービスやドメイン、ソフトウェアの利用料など、継続的に発生する支出が増えていきます。
前年の支払いの記録を見ながら、今年も同じ時期に発生する支出を洗い出しておくと、記帳の漏れを防げます。
控除についても、毎年確認が必要です。
国民年金保険料の控除証明書は、例年11月ごろに送られてきます。
生命保険料の控除証明書や、小規模企業共済、iDeCoの掛金の証明書も、年末から年明けにかけて届きます。
届いた書類は、その場で封筒やファイルにまとめておくと、申告時に探す手間が省けます。
前年の申告書を下敷きにして作成する場合は、注意したい点があります。
金額や控除の内容を入れ替え忘れて、前年の数字がそのまま残ってしまう場合があります。
とくに、保険料の金額や、家事按分の面積や時間の割合は、年によって変わる可能性があります。
前年の数字を流用せず、今年の証明書や記録で確かめる習慣をつけます。
帳簿は『期首残高』の確認から始める
『期首残高』とは、新しい年の初日の時点で、現金や預金、売掛金などがいくらあるかを示す金額です。
複式簿記で記帳している場合、前年12月31日の残高が、そのまま2年目の1月1日の残高になります。
会計ソフトを使っている場合は、前年のデータから自動で引き継がれるのが一般的です。
ただし、引き継がれた数字が正しいかどうかは、自分で確認する必要があります。
とくに、事業用の口座の通帳残高や、手元の現金の額と、帳簿上の残高が一致しているかを見ておきます。
この確認を怠ると、年の途中で数字が合わなくなり、原因を探すのに多くの時間がかかります。
最初に残高を確認しておくだけで、その後の記帳の手戻りを防げます。
去年の申告書を見返すチェックリスト

2回目の申告を始める前に、去年の申告書と控えを手元に用意します。
去年の内容は、今年の準備を進めるうえで、最も身近な手がかりになります。
- 去年の売上と経費の合計金額を確認する
- 去年の経費の内訳を見て、今年も続く支出に漏れがないか確かめる
- 家事按分の割合を確認し、今年も同じ考え方で続けるかを決める
- 去年の所得控除(保険料、共済、寄附など)を確認する
- 去年の申告で迷った点や、後から気づいた誤りがないかを確認する
- 青色申告承認申請書を提出済みで、今年も青色申告を続けるかを確認する
去年の申告書は、内容を確認するだけでなく、今年の数字と並べて比べることにも役立ちます。
売上が増えているのに経費が増えていない、あるいはその逆といった変化は、記帳の漏れや、事業の変化に気づく手がかりになります。
去年の申告に誤りが見つかったとき
2回目の準備を進めるなかで、去年の申告に誤りがあったと気づく場面もあります。
経費を計上し忘れていた、控除を入れ忘れていた、といった内容です。
納める税金が少なすぎた場合は、『修正申告』という手続きで、不足分を納めます。
納めすぎていた場合は、『更正の請求』という手続きで、払い戻しを求められます。
更正の請求は、原則として、法定申告期限から5年以内であれば行えます。
誤りに気づいたときは、自己判断で放置せず、早めに手続きを検討します。
修正申告は、税務署から調査の通知を受ける前に自主的に行えば、過少申告加算税がかからない場合があります。
手続きに迷う場合は、税務署や税理士に相談する方法があります。
資金の流れを、年間の表で見通す
2年目に入ると、税金や保険料の支払いが、年間を通じて分散して発生します。
支払いの時期を表にして眺めると、資金の準備がしやすくなります。
| 時期 | 主な支払い |
|---|---|
| 2月中旬〜3月中旬 | 前年分の所得税の申告と納付(振替納税の場合は4月ごろ) |
| 6月ごろ | 住民税の納付書の送付、国民健康保険料の通知 |
| 7月 | 予定納税の第1期分(対象の場合) |
| 8月・10月 | 住民税の納付 |
| 8月・11月 | 個人事業税の納付(対象の場合) |
| 11月 | 予定納税の第2期分(対象の場合) |
| 翌年1月 | 住民税の最終回の納付 |
売上が入ったタイミングで、見込みの税額と保険料の分を、別の口座に分けておく方法があります。
手元の資金と、納税のための資金を分けておくと、請求が届いたときに慌てずに済みます。
今日から始める3つの行動
確認する項目が多く見えても、すべてを一度に整える必要はありません。
まずは次の3つから始めると、負担が少なく進められます。
- 去年の確定申告書の控えを取り出し、売上と経費の合計を確認する
- 会計ソフトや帳簿の期首残高が、通帳の残高と合っているかを確かめる
- 住民税や国民健康保険料の請求を見込んで、納税用の資金を別に分ける
制度の内容や金額は、税制改正によって変わることがあります。
実際に手続きを進める際は、国税庁や自治体の最新の案内を確認します。
この記事のポイント
- 2回目の申告では、前年の所得にもとづく住民税や保険料の請求が加わります
- 個人事業税は、対象の業種で所得が年間290万円を超えた場合にかかります
- 前年の納税額が15万円以上の場合、7月と11月に予定納税が必要になります
- 帳簿は、期首残高が通帳や現金の実際の額と合っているかを確認して始めます
- 去年の申告書は、今年の数字と並べて比べると、記帳の漏れに気づけます
- 去年の申告に誤りがあれば、修正申告や更正の請求で対応できます
- 納税用の資金は、売上が入ったタイミングで分けておくと安心です
去年の申告書を、最後に開いたのはいつでしたか。
今年の数字と並べたとき、まず確かめたい項目はどれでしょうか。